えんぴつけずり


スナネズミが、帯を巻くようになった。
シュルシュルと帯をほどけば、やっぱり、「あ〜れ〜」と言うのだろうか。
メスだから、きっと言うのだと思う。


あるいは、帯に見えるけれど、帯ではなく、鞍なのかもしれない。
「そんなもの背負っていては重かろう」と、鞍を取ってやるのもいい。
でも、鞍と定義すると、「シュルシュル」ができなくなってしまう。


せっかくだから、「シュルシュル」したい。


彼女の腰に巻かれているのは、帯だと思う。
確実に、帯である。


帯と断定したところで、シュルシュルほどいてみることにした。


わたしが帯に手をかけると、彼女は哀しい目をして言った。


「帯だけでなく……、着物も着てみたかった」


本当に、本当に切ない声だった。
わたしは、彼女の帯をほどくのをやめた。


しばらくすれば、彼女の毛色は、いま帯に見えている部分と同じくらい濃い茶色に変わるだろう。


すっぽりと着物に包まれた体は、帯だけ巻かれているよりも、エロティックだ。


……、と書きつつ、「それは当たり前だろう」と思った。
「全裸に帯」の女は、「全裸に腹巻き」のおじさんと同じくらい情けない。