ネズミ見に来てください

これはもう恋ですよ。
恋ですね。
完全に恋ですね。


飲み会にて。
初対面の女性に、わたしが「ネズミ飼ってるんですよ。今度うちにネズミ見に来てください」と言ったら、彼女はなんと答えたと思いますか?


「行かねぇよ!!」ですよ。


いや、別にツンデレが好きとか、そういうことではないんです。


その意外性が。


絶対に出てこないだろうと思っていた言葉が彼女の口から発せられたとき、わたしは「芸術だ」と思いました。


彼女自体が芸術でした。


社交辞令で、言うじゃないですか・・・・・・ふつうは。
「わー、見てみたい」とか。
「機会があったら見に行きます」とか。
「5年後くらいに見に行きます」とか。


彼女は、「ネズミって怖いんだよ!」と言って、ネズミが大量発生して、人間の生命が脅かされる?
そんなマンガ?
・・・・・・わからない。
わたしにはわからない。
食料を土に埋めておいたらネズミに食べられ、人間が・・・・・・
とも言っていた。
ともかく、そのマンガによるとネズミは怖いから、うちにネズミは見に来ないと言うのです。


「おかしいよ。ふつう、見に行かないよ」
とまで言っていました。


わたしが一生懸命、「うちのネズミは色がついてますよ。3匹いるから色とりどりですよ。ハムスターみたいなものですよ」と説得しても全然だめでした。
「でもネズミじゃん」ってな感じです。


そのあと、「じゃあ、囲碁を打ちに来て下さい。ルール簡単だからすぐ覚えられますよ」と誘ってみたら、意外にも興味を示してくれました。
「やってみたい」とまで言ってくれたので、「やった!!」と思っていたところ・・・・・・


「1番頭いい人って、どっちだっけ?将棋の人?囲碁の人」と彼女は言い出しました。


『1番頭いいってなに?そんなの一概には言えないのでは!?世の中には、なんかそういうふうに言われてる人がいるの?誰?知らない。わからない。なんだ!?』
とわたしは考え込みました。


わたしがぐるぐる考えている間に彼女は「わかった!!将棋の人だ」とひとりで納得し、他の方と将棋の話を始めてしまいました。


あぁ、なんて素敵な人なんでしょう!!!!!


素敵すぎるので、「いや、ほんと、うちにネズミ見に来て下さいよ」ともう一度誘ってみたら、やっぱり2度目も「行かねぇよ」と断られました。


何かの機会でまたお会いしたとき、3度目も誘ってみようと思います。