古本屋で理性を失う

古本屋から、また出られなくなりました。
わたしはいつもそうです。
いつも古本屋から出られなくなるのです。


「古本屋が大好きで、いっそ寝泊まりしたいくらいだ」
という気持ちから、出られないわけではありません。


出るタイミング、本をレジに持って行くタイミングが掴めないのです。


今日など、いつもの典型的な「出られないループ」にはまってしまいました。


店に入って5分も経たないうちに、目当ての本を1冊見つけました。
ここで、すぐにレジへ向かったら、よかったのです。
「せっかくだから、もう少し見て行こう。他にも面白い本を見つけられるかもしれない」
さらに店内を探したのがいけませんでした。


5分経ち、10分経ち……、30分が経ちました。


「わたしには、面白い本を2冊も見つけるなんて無理だ。手に持っている1冊をレジへ持って行こう!買おう!帰ろう!」
と、予定を変更しました。


……、できません。


1冊の本を選び終えてから、25分も経っています。
25分間も、(実質)何もせず、店内をうろついていたのだから、その間、人間として大切な部分を失ってしまっていても、おかしくありません。


例えば理性とか。


独り言を呟いていたかもしれません。
あり得ない表情をしていたかもしれません。
あるいは、ゥヒーゥヒーとか、奇声を挙げていたかもしれません。


レジに行き、店員さんの目の前に立つなんて、恥ずかしくてできません。


でも、頑張りました。
店員さんの前に経ちました。
はにかみながら、本を差し出しました。


店員さんの応対は、普通でした。


これからは、空白の25分間など、作らないようにしようと思います。
毎回、思います。