謝辞、メラトニン様

最近、夜に眠れるんですよ。
夜に眠れるって、すごくないですか?


数ヶ月前は、絶望的に眠れなくて、眠れるサプリメントメラトニンを服用していました。
でも、全然効かなくて、早朝に寝て、昼ドラの時間に合わせて起きるという、廃人生活を送っていました。


それが、今では、なんと、毎日、朝9時に起きています。
真人間になりました。


それもこれも、忘れもしない、5ヶ月くらい前……、いや、7ヶ月くらい前だったかもしれませんが、とにかく忘れもしないあの日ですよ。


その夜、わたしはメラトニンを90錠飲みました。
適正量は1錠なのですが、毎日毎日、せっせせっせと、1錠飲んでも、眠れなくて、頭にきたのです。


それに、翌日は、一緒に暮らしてる彼が家に友達を連れてくる、なんて言うじゃないですか。


わたしは社交能力がゼロなんです。
あと、昼間はごろごろ寝ているんです。


これはもう、死ぬか、24時間くらい眠っているかしか、選択肢はありません。


家のどこを探しても、死ねそうな薬をありませんでした。
あるのは、徳用サイズのメラトニンのみです。
「あとどのくらい残ってるのかな」とウキウキしながら、1錠ずつテーブルの上に並べて数えました。
もし100錠あったらオーバードーズをしよう」と決めて数えました。
97錠でした。
飲むことにしました。
向こう1週間のために、7錠残し、90錠一気飲みしました。


彼に、「飲んじった」と、明るく報告しました。
「吐け!吐いてこい!」
「いやだ」
「じゃあ、知らねぇ」
短い会話のあと、彼はノートパソコンを広げて、ネットを始めました。


パソコンって、聖域だと思うんですよ。
パソコンで作業をしている人には、話しかけては行けない、というのが持論でして……。


とにかく、三日三晩吐き続けるとか、あるのかないのかわからないけど、そういうのは困るので、胃腸虚弱に効くことで有名な、養命酒を適正量の2倍ほど飲んでおきました。
眠りました。


2時間後に目が覚めました。
気分も悪くもないし、眠気もありません。
また、寝てみました。
30分後に目が覚めました。
また寝て、また30分後に起きました。


眠くないようでした。


夜が明けるのを待ちました。
ついでにパン屋が開くのも待ちました。


朝7時、開店と同時にパン屋でパンを買いました。
公園で食べました。
おじいさんに話しかけられました。
ベンチでパンを頬張る私に近付き、「食べ物、おいしいですか?」と訊ねました。
食べてる物が、パンなのか何なのか、見えなかったのでしょう。
そのあと、「ひとつくれますか?」とも訊かれました。
老人にはやさしくしなければならないと、学校で習いました。
電車で席を譲らなきゃならないし、たぶん、食べ物とかも、譲らなきゃいけないというのが、この国のルールだったような、気がします。


パン屋の緑色のビニール袋に手を突っ込み、どのパンを老人に渡すか、20秒ほど悩みました。
『チョココロネは絶対に譲れないし、だからといってサンドイッチを渡してしまえば、わたしの朝食は甘いパンばかりになってしまう……』
シュガートーストを譲ることに決め、老人に差し出しました。
「いいよいいよ。いらないよ」
老人は言いました。
どうやら、冗談だったようです。


あー、こうしてわたしは、人とのふれあいの素晴らしさを学びました。
朝7時台に公園のベンチに座ってみて、初めて早朝の爽やかな風を知りました。
『早起きは3文の得』
この諺が理解できる、まっとうな人間になりました。


早起き万歳!
オーバードーズ最高!
メラトニンありがとう!
冷たい人かと思ったら、グーグルでメラトニン調べてくれてた彼氏ありがとう!
家の前で倒れて3日3晩眠り続けるくらいの症例しかないってわかると、さっさと寝ちゃった彼氏ありがとう!


最近は、メラトニンを錠剤から、液体でスプレー式に切り替えて、眠れて、起きれる生活を謳歌しています。
なのに7時に起きず、9時に起きるのは、それはもう、ポリシーというか、怠惰というか、贅沢というか。


とにかく、早起き最高です。