ハム子を僧侶に託した(昨日の続きです)

MRI検査を受けました。


MRI装置の中で、般若心経を聴きました。
ドラムの音も聴きました。
電気グルーヴの曲が聴こえたときは、申し訳ない気持ちになりました。
検査なのに、こんなに楽しんでいいのかと、恐縮しました。


でもいいんです……、楽しんでも。
だって……、幻聴だから。


大きな音が聴こえたのは、事実です。
マイクを通した係の人の声が、装置の中のスピーカーから聞こえました。
「1分、音だします」
「3分、音だします」
「5分、音だします」
そのたびごとに違うリズムの音が流れてきました。


初めは不快でした。
『30分も、音楽でもなんでもない、ただの大音量の中にいるのは耐えられない』と思いました。


でも、違ったんです。
ただの大音量ではなかったんです。


確かに般若心経でした。
「ギャーテー ギャーテー ギャーテー」と言っていました。
「ハラソー ギャーテー」とか、「ボーディー ソワカ」とかはありませんでしたが、「ギャーテー」だけは聴こえました。
あと、その後ろで、もう1人の僧侶が、「ぱなぱなぱなぱなぱな……」(意味不明)と言っていました。
素晴らしい、僧侶デュオでした。


般若心経を聴きながら、わたしは初めてハム子と対話をしました。
傍にいるようでした。
謝りました。


ハム子を好きだった瞬間が、あったことを思い出しました。
「前に、色の薄いメスを買ったら、一週間で死んじゃった。このコなら、色が濃くて、なんか長生きしそう」
小学生のわたしは、なんの根拠もなくそう思いました。
そうやって、ペットショップで、何匹もいるハムスターの中から、ハム子を選びました。


MRI装置の中から出たとき、目にはうっすらと涙が浮かんでいました。
係の人に気付かれないように、早く手で拭いたいと思いました。
でも、顔がマジックテープのようなもので固定されていて、それを取ってもらわないことには、涙を拭えませんでした。


MRI検査の結果は、とっても良いものでした。
眼球は、突出していませんでした。
今のところ、目の手術とかは、全く必要ないと言われました。


子どもの頃にわたしの不注意で眼球突出させてしまったハム子のことは、
僧侶デュオに託しました。