『どうぶつの森』きちがい

たぬきから、家を買った。
正確に言うと、強制的に買わされた。
さらに、家のローン返済のため、たぬきの経営する店で、バイトさせられた。
バイトはつまらなくて、こんな生活いやだなぁ、と思った。


たぬきにおつかいを頼まれるたび、寄り道をして、道ばたに生えてる木を蹴った。
木を蹴ると、リンゴが落ちてきた。
それを鞄にいっぱい詰めた。
一生、リンゴを拾って生きていくのもいいな、と思った。
それを売って生活すれば、わたしの職業は「リンゴ売り」。
なんて文学的な仕事なんだ。


たぬきの店でのバイトをやっと終えた。
バイト代は、ローン返済に充てた。
面倒な労働のあと、手ぶらで帰るというのも虚しいので、バイト時間中に寄り道して拾ったリンゴを、たぬきに買い取ってもらった。
少しお金になった。


「はぁ、くたびれた」
家に帰ってドアを開けると、そこには、ロウソクとラジカセしかない、わたしの部屋があった。
多額のローンが残る……、ボロ屋。


ベッドに横になっても、なかなか寝付けなかった。
耳鳴りがする。
寒気もする。
体温計で熱を計ってみた。
38.7℃あった。


こりゃいけない、と思って、おでこに冷えピタを貼った。
さらに、太ももとか首すじ、腋の下など、動脈のありそうなところに、ペタペタと冷えピタを貼った。
そして目を閉じた。
この何もない、誰もいない部屋で、明日、何を食べて生きようか……、不安になった。


『そうだ!わたしにはリンゴがあった!!』
リンゴはどこかと、鞄の中をごそごそ探した。
でも、わたしの鞄の中には、リンゴはひとつも入っていなかった。


『おかしいなぁ。たぬきに8個売って、2個はとっておいたはずなのに』
もう一度探してみたけど、やっぱり鞄の中にりんごはなかった。


熱が出たときこそ、リンゴが必要なのに……。
おろし金で擦って、擦ってるうちに茶色く変色したりんごを、まずいまずいと食べる……
熱が出たからには、それをなんとしてもやりたい。


明日また、リンゴを拾いに行こう。
それか、コンビニに買いに行こう。


そのためには、一晩で、外出できるまでに回復しなければならない。


でも、もしかしたら、明日になれば、リンゴが鞄の中に戻っているかもしれない。


目が覚めたら、熱を計るより何より、鞄の中を見てみようと思った。
そう思いながら、眠った。