名前書き取り

数日前に結婚し、名字が変わりました。
新しい名前は、山田にえです。


……、ウソです。


画家のピエール・モリニエから頂戴した(パクった)ハンドルネームなので……
「森」を「山田」とか、「田中」に変えてしまうと、もう、なんのことやらさっぱり……、になってしまいます。


で、森にえとは別にある、本名のほうが変わったわけなんですが、まだ、新しい名字をまともに名乗ったことがありません。


一昨日、クリスマスケーキの予約をするとき、新しい名字を口にしたら、店員さんに、何度も何度も聞き返されました。
やっと聞き取ってもらえたと思ったら、「◯◯さんですね」と確認された名前が、全然違う名前でした。


昨日はクリスマスプレゼントを買いに行き、ラッピングを頼むときに、名前を名乗る機会がありました。
「ラッピングが終わりましたら、お呼びしますので、お名前頂戴してよろしいですか」
という具合に、訊ねられました。
『はいはい。ぜひ、頂戴してください。わたしは新しい名字を名乗ってみたくてしょうがないんです』と内心思いながら、名乗ろうとした、そのときでした。


38.7度の熱を出してからまだ日が浅いので、体調が万全ではありませんでした。
ちょうど、名前を口にしようとした瞬間に、立ちくらみがして、倒れそうになりました。
倒れそうになりながらも、名前を名乗り、ラッピングをしてもらいました。
その前後の記憶が曖昧です。


今日、天才に宅配便が届き、伝票にサインをしました。
新しい名字を書きました。
でも、それはすでに100回くらいやっていることなので、何の感動もありませんでした。
今までずっと、天才宛に来た宅配便の伝票に、天才の名字でサインしてきたからです。
天才の名字を伝票に書いて渡すたび、「わたしって何ものなんだろう」と、思っていました。


今日も、伝票にサインしながら、「わたしって何ものなんだろう」と思いました。
今までと違って、ウソの名字を書いたわけでもないのに。


新しい名字に慣れるため、漢字書き取りみたく、ノートにびっしり名字を書いてみようかと思ったけれど、天才に見られたら怖がられそうなので、やめました。