関東の空に代わって

雪が降っています。
ごめんなさい。
こんなベチャベチャな雪を降らせてしまって、本当に申し訳ありません。
関東の空に代わって、わたしがお詫びします。


……今日はそんな気持ちです。


雪の中、天才とふたりでファミレスへ向かいました。


彼が、溶けた雪でグショグショになった道を歩くたび……
『あぁ、ごめんなさい』


彼が、凍った雪に滑って転びそうになるたび……
『ほんと、ごめんなさい。こんなベチャベチャした雪で』


そんなふうに、申し訳なさでいっぱいでした。


彼は雪国出身です。
彼の出身地に降る雪は、関東と違って、サラサラしているという話は彼から何度も聞かされました。
頭や服に付いた雪が溶けることはなく、手で払えば、ハラハラと落ちるそうです。
だから、雪の中、傘なんて差したことはないと言います。


今日、出掛ける前に、天才から、「やっぱりこれって、傘必要かな?」と、雪景色を指差しながら訊かれ、絶句しました。


『この人は、本当に、傘を差さないで生きてきた人なんだ』


ファミレスからの帰り道、服を着た犬を見ました。
飼い主に、雪が降る中、散歩させられている犬は、服は着ているけれど、靴は履いていませんでした。


きっと犬も……
「東京の雪はベチャベチャしてかなわんな。足が冷たいじゃないか」
そう思っているんじゃないかと思うと、犬にも、関東の空に代わって謝らなければという使命感にかられました。


その犬が、雪国のサラサラした雪を知っているかどうかは、わかりません。