強い子元気な子

歯医者に行った。


わたしも大人になったもんだと・・・・・・
歯を削られ、自分の唾液と水の混ざった液体を噴水のように顔に浴びながら、思った。
「麻酔しますので痛かったら手を挙げてください」と言われても「はい」と言いつつ、耐えられないほどの痛みじゃないから手を挙げなかったし。
それに、何より、わたしの治療にあたってくれた人は、医師と、助手の2人だけだった。


6歳の時に行った歯医者では、わたしの治療にあたってくれた人は、4人だった。
3人が暴れるわたしの手足を押さえ付け、1人がわたしを怒鳴りつけながら治療を行った。


その頃に比べたら、わたしも随分痛みに強くなった。
もしかしたら、今では、わりと痛みに強いほうの人間かもしれない。


2週間くらい前、ミシンを扱っていて、ミシン針を左手の人差し指に刺した。
そのときも、冷静かつ、痛みに強い自分に感動した。


『えーっと、今、指にミシン針が刺さっている。まず、これを抜かなくてはならない』


そんな感じに、とても冷静だった。
本当に冷静だった。


だから、大丈夫。


もうそろそろ麻酔が切れて、歯が痛くなるかもしれないけど、大丈夫。


「あと0.1ミリか0.2ミリ削れば神経に到達するくらいひどい虫歯だったから、もし痛みが出て、引かないようだったら、次のときに神経を抜く」と言われたけど、大丈夫。


子どものときに乳歯の神経を抜かれたときには、叫んで暴れたけど、わたしはもう大人だから大丈夫。


大丈夫大丈夫。


歯医者の受付に「泣かなかった子には帰りにマスコット人形をプレゼント」って書いてあった場合、泣かなくても、暴れたらもらえないってことを知ってるくらい大人だから、大丈夫。


大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせながら、今日は、麻酔の切れないうちに眠ることにした。


その前に、もらった痛み止めをもし飲んだ場合の副作用について、ネットで調べなければならない。