ミカンなはずない。缶コーヒーなはずない。ネギなはずあるわけない。

買い物に行く途中、植木屋さんを見かけた。
民家の松を刈っていた。
そばにトラックが止まっていて、運転席の前にはミカンが3つ、置いてあった。
あのミカンは植木屋さんが別の家でミカンの木を刈っているとき、とても欲しくなって、そっと取って運転席のところに置いたのだろう。
そんなふうに想像した。


とすると、家の近くでよく見かける、缶コーヒーの空き缶が30本くらい運転席の回りに置いてあるトラックは・・・・・・
運送屋さんが、缶コーヒーをとても欲しくなって、運んでいる途中の荷物からそっと取ったということになるのか。


世の中、善人ばかりなので、そんなはずはない。


「そんなはずはない。そんなはずはない」と呟きながら、スーパーに向かった。
夕食はジンギスカンの予定だ。
『ラム肉は冷凍庫の中にあるから、ニラとキャベツとニンジン、それにネギを買おう』


そう考えていたら、ネギがちょうど目の前に会った。
スーパーの前に停めてある自転車のかごに、ビニール袋に入ったネギがあった。


ネギを抜き取ろうという考えが一瞬頭に浮かんだような気がした。


でも、そんなはずはない。
世の中善人ばかりなので、そんなはずはない。


そんなはずはない。
そんなはずは、ないよ。
きっと。