カモだから。カモだし。
井の頭公園に行き、ボートを漕いだ。
池じゅうにカモがたくさんいた。
あんなにたくさんカモがいるところは初めて見た。
わたしが乗ったのは手漕ぎボートで、スワンとか箱がたのボートに乗っている人のまわりには「カモだかり」ができていた。
えさを与えているひとのまわりにも、与えてないひとのまわりにも、カモは集まっていた。
羨ましかった。
わたしもカモを集めたい!!
「この手漕ぎボートでだって、集められるさ。えさがなくたって集められるさ」
まずは、「カモだかり」を作ってるスワンに接近。
適度にカモに近付いたところで、えさをまく……ような動作をする。
みるみる寄ってきた。
そこからは小さな動作に切り替え。
ボートから手を伸ばして、カモがクチバシを動かすのと似たような動作を、親指とその他の4本の指でパクパク再現。
とっさに思いついた方法だけど。
カモ!
集まりまくり!!
カモ!
ボートのへりにクチバシ乗り出してる!!
カモ!
手に食い付こうとしてる1!
ボートが漕げる川にいるカモの色は3種類で、2種類はバカだった。
あとの1種類……カルガモは賢くて、近寄ってくるけど遠目から疑わしそうに見ていた。
ボートを下りてから、橋を挟んでボートではいけない反対側の川を見た。
カモの種類は3種類だけでなく、もっといた。
橋に取り付けられたプレートには、写真付きの解説があった。
わたしが「バカだ」と思っていたカモは、どうやら同じカモの雄と雌だということがわかった。
橋の上から、お父さんに連れられた男の子が、カモにえさをやっていた。
えさの取り合いで、カモとカモのあいだで、たびたび激しいケンカがおきていた。
「生態系を乱す」とかで本当はえさをやってはいけない。
だからということもなく、わたしはやっぱり騙すことが楽しいので、手の中に本当はないえさで少しのカモを自分のほうに集めて遊んだ。
巨大な鯉が口を開いた。