電信柱を蹴りました

昨日、「電信柱を蹴りたい」と書きましたが、その直後、実際に蹴りました。


「コンビニに行こう」
「うん。行こう」


てくてく。


「電信柱だ。蹴ろう」
「うん。蹴ろう」


そんな感じで、なんでもないことのように、天才とふたり、電信柱を蹴りました。
空手を習い始めた天才は、習ったばかりの前蹴りとかハイキックとかをやりたそうでしたが、それだと骨が折れてしまうので、残念そうに折れない蹴り方で蹴っていました。
わたしはもともと、ヤクザ映画で蹲った相手を蹴るときみたいな、てきとうな蹴り方で蹴りたいと思っていたので、相手は電信柱で問題ありませんでした。


初めは「わたし、今、すっごい怖い顔してるんだろうなぁ」と思いながら蹴っていたのですが、30回くらい蹴ったところで、だんだん笑いが込み上げてきました。


そして、ケタケタ笑いながら、ガンガン蹴り続けました。
最初は相手に不満があった天才も、いつのまにか、満面の笑みを浮かべて、電信柱を蹴っていました。


かなり蹴り続け、もう満足というところで、どちらからともなく、コンビニに入りました。
そのコンビニは、それまで蹴っていた電信柱から3メートル歩いて、角を曲がって2メートル……、という目と鼻の先にあります。
家からも近くて、ほとんど毎日通っているコンビニです。


「電信柱を蹴りたいけど、蹴れないなぁ」と悩んでいたのが、嘘みたいでした。


『電信柱って、蹴れるんだ!!』
と思いました。


希望が湧いてきました。
愛国心が芽生えました。


そして、電信柱を一緒に蹴れる相手がいるっていいなぁ、と思いました。


コンビニでヨーグルトとかアミノ酸ドリンクとかを買って外に出ると、コンビニの前にはちょっと悪そうな高校生がたむろしてました。


「あたしたち、電信柱蹴れるんだぜ」と、彼らに自慢したい気分になりました。


でも、そうして自慢する自分の姿を想像したら、再び笑いが込み上げてきたので、それを堪えるのに必死で、黙って通り過ぎました。