わたしのかわいいコックさん

食後のリビングで、こたつを挟んで向き合っていた天才が、突然「えかきうたをやろう」と言い出した。
「そうか、やろうじゃないか」と、やることにした。


まずはオーソドックスに、「かわいいコックさん」。
ただし、ふたりとも歌も絵も覚えていない。
わたしが歌詞を思い出しつつ歌って、天才が絵を描くということで、メモ帳を出してきて、始めた。


「雨がざあざあ降ってきて」


「いきなり雨か!?」


天才がコックさんの帽子にあたりそうな部分に、縦線を1本描いた。
もっとあった気がする。


「雨が さらに降ってきて
コッペパンふたつ
……いや、みっつ?


あ! 違うよきっと。
そのへんにもコッペパン描いてよ。
そしたら手足になるから。
そうそう。


そうこうするうち夜になり
三日月が
でーてーきーました」


「なんだよ!? 三日月って」


「あ、半月か。半月描いて。そしたらポケットになるよね」


そうして天才が描いた(若干わたしが誘導して描かせた)「かわいいコックさん」が下の絵。
へのへのもへじは、天才がただ余白に落書きしたもの。
「この『へのへのもへじ』、野良仕事とかまじめにやりそうだよね」と言って話題を広げようとしたけど、軽く聞き流された。

今度は、天才がノートパソコンを広げ、「かわいいコックさん」で検索をかけ、わたしには完成形の「かわいいコックさん」を見せないようにして、正しい歌詞を歌い出した。


「カエルかな」
と歌うものだから、素早く、かつ、カエルらしいカエルを描くために頑張った。
手足のあるカエルを描こうとした。


それなのに……
「カエルじゃないよ」
と、さっきまでの努力を否定された。
その後、「アヒルだよ」と言われ、苦し紛れに前を向いているカエルの横顔にくちばしを生えさせた。


雨は降った。
三角定規にヒビも入れた。


これ以上、わたしにどうしろと言うのだ!?
これが100パーセントの力を出しきって描いた、わたしの「かわいいコックさん」。

あと、同じ方法で、天才が歌を歌ってわたしが描いた「ひまわり」。
まるばつゲームをやる相手がいなくて、ひとりで丸ばっか描いちゃった、みたいな悲しさがある。
それでいて、ダイナミック。
友だちいない子(わたし)のストレス発散みたいだ。

歌を学んだのは、下のサイト。
http://www.success1.co.jp/mukasi/ekaki/ko.html